ダブルス

第一日目
レキシントン市民テニス大会のダブルスは8月25、26日の二日にわたって行われた。イジケビッチは今まで混合ダブルスで家内と出場したことはあるが、男子のダブルスは初めてだった。普通シングルスしかせず、ダブルスをしたことがないことと、ダブルスはパートナーのことも考えなくていけないし、戦術がシングルスより複雑なので、ダブルスはしたことがなかった。今回2年前に高校でナンバ−2だった18歳の男性がパートナーを探していて、彼と一緒にダブルスをすることにした。
9チームしか出場しなかったので、3試合勝てば優勝する。一回戦は午前9時からで、イジケビッチと同年代の選手のチームで毎週よく一緒にダブルスをしているチームだった。イジケビッチ組は初めて一緒にプレーするため二人の呼吸がいまいち合わず初めはちぐはぐなプレーが目立ち、自分たちのサービスゲームを取られることも度々で、結局第一セットは6対6でタイブレークに持ち込まれた。タイブレークも一進一退でお互いにミスをし合ったり、素晴らしいプレーの連続があったりしたが、結局イジケビッチ組が10−8で第一セットをものにした。
 相手のチームは第一セットを落としてがっかりしたのと、第一セットで体力を使い果たしたようで、第二セットは簡単に6−2で取った。2セットだけだったが、1時間42分もかかってしまった。35度以上の暑さの中で優勝するためには出来るだけ体力の消耗を避けなくてはいけないのに一回戦でそんな長い試合をするなんて、先が思いやられる試合だった。
 準決勝は午後3時からで、猛暑の中での戦いだった。相手は2年前に優勝している父子チームで、父親とはイジケビッチが昨年まで土曜の朝シングルスの試合をしていた仲だ。子供の方は高校のナンバ−1で父親同様強烈なサーブの持ち主だ。優勝経験があるので相手は自信満々で、第一セットは0−4と圧倒されてしまった。そこまでわずか10分足らずで、このままでは1時間以内に試合が終わりそうだった。しかし、イジケビッチ組は自分たちのサービスゲームをキープし、相手のサービスゲームをブレイクすることで4−4まで挽回した。最後は相手のサーブに圧倒されて4−6で第一セットを落としてしまった。
 しかし、第一セットで0−4から挽回して4−6になったのだから、もう少し頑張ればひょっとすればひょっとするぞ、という気になり、第二セットイジケビッチ組は初めから飛ばして5−2になった。ところが、イジケビッチは緊張したのか自分のサービスゲームを落としてしまい、相手がサービスゲームをキープして5−4になった。最後はイジケビッチのパートナーがサービスゲームをキープして6−4で辛勝した。
普通だったら第三セットで決着が着くが、この大会にはセット数が1対1になったら、スーパータイブレークと言って10ポイント先に取った方が勝ちになるというルールがあった。こうなると追う者の強みで、イジケビッチ組は第2セットに勝った勢いに乗って、10−5で2年前の優勝チームを破ってしまったのだ!まさか2年前の優勝チームに勝つとは思わず、日曜には和食の材料を車で一時間のところにある町まで買いに行こうなどと考えていたイジケビッチは勝利の美酒に酔った。

第二日目
 例年日曜は教会に行く敬虔なクリスチャンが多いためか、試合は午後1時から開催されることになっている。午後残暑の厳しい暑さの中でやるよりも午前中涼しいうちにやれたらいいのにな、と思いながら、イジケビッチは3時からの決勝を待った。第一日目同様第二日目も午後3時は35度以上の暑さで、立っているだけで汗がダラダラ流れて来る。相手はダブルスをもう10年以上一緒にやっていて、レキシントンの市民大会のダブルスでもう数回優勝しているチームだった。年齢的には六十路に届いているだろうが、ダブルスのやり方を熟知しているチームだ。ドロップショットやら、ロブやら、その状況に応じたいろいろな球が返って来て、イジケビッチ組は翻弄されて1−6で第一セットを落としてしまった。
 イジケビッチもパートナーも単純ミスの連続で、第一セットを取られたことをよく知っていたので、第二セットは初めから飛ばして行き、相手が調子に乗るのを防いで6−1で圧倒した。相手は年齢的なこともあり、10分ほどの休憩を取ろうと言い出した。すっかり調子が出て来たイジケビッチ組は本心はすぐにでも始めたかったのだが、敬老精神を発揮して10分の死刑執行延期に同意した。
 休憩の間に二人で、この試合も昨日の第二試合目と全く同じで、第一セットでミスで連発してセットを落とし、第二セットで復活して相手を圧倒、スーパータイブレイクでそのまま調子を持続させて相手をねじ伏せよう、と誓い合った。スーパータイブレークはイジケビッチのリターンエースで始まり、パートナーがサービスをキープ、相手のサーブに対して強烈なリターンを連発、と一方的な試合運びで10−1と圧倒して優勝を飾った。ダブルスの経験なし、初めて組むパートナーと全く練習することなくぶっつけ本番だったにもかかわらず、初出場で初優勝という栄誉に輝いたのであった。パートナーには、試合前に「勝ち続けて優勝しようぜ」とは言ったものの、一試合勝てればいいかな、と思っていたのに、本当に優勝してしまうとは、人生は本当に不可解なものだ?!?!


パートナーと優勝の直後。
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