日本人は働き過ぎだ、日本は長時間労働によって不当な利益を上げ経済大国になった、住宅、余暇、等生活の質を向上させることに注意を向けずひたすら日本経済を高い水準に維持することにばかり熱中している、という批判が最近アメリカ人を初め、多くの外国人から出ている。戦後驚異的な経済成長を成し遂げ、国が豊かになったことは確かである。しかし、実際の国民生活も経済成長と共に健全に成長したであろうか。少し日本人の余暇について考えてみよう。
下記のデータは最近の日本人の余暇に関する意識を調査したものである。
A: 余暇に何をするか
1 外食 6 動物園、植物園、水族館、
2 ドライブ 7 遊園地
3 国内旅行 8 体操(器具を使わないもの)
4 バー、スナック、パブ、飲み屋 9 海水浴
5 トランプ、オセロ、カルタ 10 園芸、庭いじり
B: レジャー活動が出来ない理由
1 平日の自由時間が少ない
2 費用がかかり過ぎる
3 長期休暇がない
4 収入が足りない
5 休日が足りない
レジャー活動が出来ない最大の理由は、「平日の自由時間が少ない」という調査結果が出ている。長い通勤時間や平日残業などで夜遅くまで仕事をすることを考えると、それも納得出来る。現在年間労働時間が2000時間以上で(アメリカは既に1900時間台)、政府が必死になって1900時間台まで下げようとしている。それが実現すれば、平日もっと余暇に費やす時間が増えることであろう。
二番目に大きい理由は、「費用がかかり過ぎる」である。Aのデータを見ても明らかなように、5、8、10を除けばすべて金がかかるものばかりである。家族でファミリーレストランへ行って食事をすれば、一回で万単位の金が出るだろう。ちょっと長い距離ドライブすれば高いガソリン代を払わなければならない。高い宿泊費、交通費のため、今では下手をすると、安いパックの海外旅行より国内旅行の方が高いことがある。何をするにも金がかかってしまう。そのため、それに関連して4の「収入が足りない」がレジャー活動が出来ない他の理由として登場する。
次に大きな理由は、3「長期休暇がない」、5「休日が少ない」で、つまり、休みが少ないということである。これは個人個人の努力で解決可能な問題ではない。前述の政府、企業が労働時間を短縮することと密接に関係してくる。この問題を解決するために、先ず初めに、制度的に休みが取りやすくなる必要がある。企業が休みを取ることを奨励して、人々が気軽に休暇が取れる雰囲気を作らなければならない。それと同時に、彼等が同僚の目を気にせずに休暇が取れるような環境を作り出さなければならない。従来は、休みを取ること自体何か悪いことをするような雰囲気が職場にあり、自分が休むと同僚に迷惑がかかるのではないか、と考えて、取れる休暇も取らないというケースがしばしば見られた。企業もそこで働く人々も、個人個人が自由に休暇が取れるように努力すべきだ。
この調査結果を見て強く感じるのは、休みを取って生活をエンジョイするということは、どこかへ行って金を使って何かをやることと勘違いしているのではないか、ということである。確かに、レストランで家族揃って食事をするのは楽しい。ドライブをして忙しい毎日を忘れ、息抜きをするのもいい。しかし、お金を使わなくても、叉どこか特別な所へ行かなくても出来ることがたくさんあるはずだ。一人で過ごす時間を大事にしたい人には、ピアノやギターを弾いたり、読書を楽しんだり、自分の趣味を思う存分楽しんだり出来る。家族と一緒に行動したい場合には、友達と集まって賑やかに話をしたり、近くの山をハイキングしたり、家でお父さんの手作り料理を味わったり、様々なことが可能である。
最後に、この調査を見て、一つ気にかかるのは、人生において仕事の占める位置があまりにも大き過ぎるのではないか、という点である。日本人は何のために休みを取るのか。仕事から解放されて、束の間の自由を楽しむ。多くの日本人にとって、日常生活で仕事が主で、仕事のことが生活の大半を占め、休暇はその仕事が順調に行くようにするオアシスのようなものでしかないのではないだろうか。休暇が、仕事をしばらく忘れ、一時的な陶酔に浸る束の間の瞬間に過ぎない、としたら、惨めだ。アメリカ人を観察すると、実によく生活をエンジョイしているように見える。仕事はあくまで生活の糧を求める手段に過ぎず、終業時間が来れば、直ちに帰宅して、家族との団欒を楽しむ。週末接待ゴルフなどというのは例外で、仕事を一切忘れ、人生を楽しむ。人生の中で仕事の占める割合は、日本人と比較したら、何分の一かであろう。仕事は自分達を養うための一つの手段、人生を楽しむために仕事をする、と日本人が割り切って考えることが出来るようになってはじめて、より効果的な休暇の使い方が出来るようになるのではないだろうか。(速水健次郎「辛口エッセイ」)