飛行機とイジケビッチ

 去年夏日本に戻る時乗った飛行機がアトランタの空港を離陸しようとして滑走路に入った。90度の方向転換をしようとしたが前の車輪が朝からの雨で出来たぬかるみにはまって動けなくなってしまい、出発が3時間ほど遅れた。滑走路での突発事故だったためターミナルに戻ることもできず、機内でいつ出発できるのか分からぬまま時間が過ぎて行った。
 今年も同じデルタの同時刻出発予定の便でゲートを離れた時去年のことが思い出された。今年は天気も視界も良いので予定通りに離陸した時にはホッとした。水平飛行に移り食事が終わって、午後1時に成田に着いて夕食を食べる6時頃まで何をしようかなどと考えていた時、突然アナウンスがあり、「コンピューターが故障してしまったので、オレゴン州ポートランドに緊急着陸、コンピューターを替えてから再出発、長時間のフライトのため乗務員もポートランドで交代、2時間程度ポートランドに止まる」とのことだった。たぶん2台ある機械のうち1台がおかしくなったのだろう。どうしてこうついていないのだろう。2年前にはシンシナティで飛行機を乗り継ぐ時テニスラケットを前の飛行機に置き忘れて出発の直前に届けてもらったし、ここ3年続けておかしなことばかり起きている。
 空港近くの雪に被われたきれいな山を見ながらポートランドに着陸。「15分ぐらいで空港ターミナルに案内、そこで故障が直るまで待って頂くので、それまでお待ち下さい」とのことで、まあ少し歩き回れるのだから機内にカンヅメになるよりましか、と思ったが、何のことはない15分後のアナウンスは「一度ターミナルに戻ると時間がかかるので機内で待機、故障が直り次第離陸することに変更しました」とのこと。しかし、いろいろあった挙げ句何とかポートランドを離陸、3時間遅れで成田に着いたのだから良しとしなくてはいけないだろう。コンピューターの故障のため以前の大韓航空機のようにロシアの領内に侵入して撃墜などということになるよりは、、、。
 3時間の遅れだけだったら1年に1度の帰国だからまあ大目に見るとしよう、と頭を切り替えようとして思い出したのが、10年以上前に冬休みに日本に戻ろうとした時のハプニングである。あの時はユナイテッド航空のシカゴからの直行便だったと思う。お正月を日本で過ごそうと思っている日本人でほぼ満席で、日本人のことだからお土産をしこたま詰めた旅行鞄で飛行機も重かっただろう。さらに悪いことに、その日はジェット気流が普通より強かったそうで、成田着陸の2時間ぐらい前に機長からアナウンスがあり、「ジェット気流が思ったより強く風の抵抗が予想したより激しくて、成田まで飛ぶ燃料がないと思われるので、千歳空港に着陸して給油の後成田に向かう」という信じられないような内容だった。普通は余分に燃料を積んでいるはずだから成田まで飛べないはずはないと思っても、万が一大平洋上で燃料が切れたらと思うと千歳への緊急着陸も仕方がないと自分を納得させることができた。
 それにしてもイジケビッチには飛行機にまつわる事故、ハプニングが多過ぎる。1970年に初めて飛行機に乗ったのは、ロシアのハバロフスクからモスクワへ向かう時だった。ロシアの古い飛行機で飛行中ずっと揺れただけでなく、揺れた時のミシミシという音には恐怖を感じさせられた。飛行時間が何時間だったか全く忘れてしまったが、生きた心地がしなかった、というのはあのような体験を言うのであろう。台風やハリケーンの暴風雨で家がミシミシときしみ始め、最後はバリバリと家が破壊されると聞くが、あの時のミシミシという音は今にも飛行機が空中分解するのではないかと思われるほどだった。イジケビッチはその経験で飛行機嫌いになり、フライトの前にアルコールを補給しないと乗れなくなったのである。
 1972年医学関係の出版社の重役二人をヨーロッパに連れて行くアルバイトの最中ベルギーからルクセンブルグに行く途中の機内で、乱気流のため飲んでいたビール瓶が天井まで飛んで、こぼれたビールでびしょびしょになったというハプニングもあった。1990年夏シアトルで仕事をしていた時親父が死んだというニュースを電話で受け即帰国、その後シアトルに戻る時シアトル空港に着陸しようとして滑走路に着陸する直前前に着陸した飛行機が滑走路から出なかったため急遽急上昇して衝突を回避するというハプニングもあった。
 かと思うと、冬休みにニューヨークからの直行便で日本に帰る時、離陸に向けて全速力で滑走、機首を上げる直前に一羽の鳥がエンジンに吸い込まれボーンという音と共に急停止、あと10数メートルで滑走路と海を隔てる岸壁に激突、という事故もあった。また、去年ボストンでの学会が終わって家に帰る時に乗った飛行機が着陸直前に視界が悪くなり、後数十メートルで着陸というところで急上昇、再度試みるも全く同じで着陸できず隣の州の空港へ着陸、バスで3時間半かけて着陸予定の空港まで戻るというハプニングもあった。どうもイジケビッチは飛行機と相性が悪いようである。イジケビッチが飛行機を毛嫌いするだけでなく、飛行機もイジケビッチを毛嫌いしているのではなかろうか。それにしても未だに理解できないのは、数百トンもの巨体がいとも軽々と空中に舞い上がることである。空気の抵抗、揚力を利用して、と頭では分かっていてもあんな大きな機械が大空を飛ぶなんて、、、、。

怎Cジケビッチ
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