「禁煙居酒屋」

  日本に戻ってすぐ行くのはいつもきまって居酒屋だ。アメリカ東海岸からノンストップの飛行機に長時間揺られて運動不足気味で日本に到着、成田からまたどっこいしょと構えて都内までの一時間あまりを電車の中で過ごす。重い荷物を抱えてやっと宿舎に着きシャワーで汗を流し、私の帰りを待っていた飲み友達といそいそと適当な居酒屋を探す。一年ぶりに日本料理が食べられる、待ちに待った焼酎が飲める、と思うと気もそぞろになる。でも、丸一年待ったのだから値段が手頃でおいしい店を探そうと努力する。店の前のつまみのサンプルを見るとすぐにでも入りたい気持になるが、それを必死になって抑えに抑えて、やがて手頃な店を見つけたらすぐノレンをくぐる。
  お兄さんかお姉さんがおしぼりとお通しを持って来るのを今か今かと待つ。「いらっしゃいませ」という挨拶を聞くやいなや、「先ず初めに生ビールの大を二つお願いします。つまみはメニューを見て決めますから」と言ってビールが来るのをひたすら待つ。一刻も早く喉を潤したいのを我慢して、おもむろにメニューに挑戦。枝豆、山かけ、焼き魚、焼き鳥、刺身盛り合わせ、あるわあるわ、食べたい物が目白押しだ。いよいよビールが登場。「お疲れさまでした」「お久しぶり」などと言いながら早速乾杯。五口ぐらいグビグビと飲み、「ああ、うまい!」と感激。一息ついて早速食べたい物を注文する。3分ぐらいで大ジョッキが空になり、焼酎のボトルを注文。枝豆、冷奴などがゾロゾロと到着。梅干しを入れた焼酎のお湯割りを飲みながら料理に舌鼓を打つ。このへんからいつも長旅の疲れが吹っ飛び、気分が乗って来る。
  ところが、待ちに待った焼酎を思う存分味わえると思い調子が出て来たところでいつも水を差される。それは周りで飲んでいるサラリーマン達が吸う煙草の煙である。日本では酒と煙草は切っても切れない関係にあるらしく、どの居酒屋に入っても紫煙ユラユラだ。どのテーブルからも白い煙が沸き上がっている。一日の労働を終えたサラリーマンが酒を飲みながらとてもおいしそうに煙草を吸っている。ニコチンが肺の奥深くに蓄積していることなどお構いなく酒の影響もあって恍惚とした表情で吸っている人もいる。しかし、煙草をやめた人間、煙草を吸わない人間には限りなく迷惑だ。電車、レストラン、駅など公共の場ではやっと嫌煙権が確立して禁煙席、禁煙コーナーが出来て快適な旅行や料理が楽しめるようになったが、居酒屋は依然として喫煙者天国である。禁煙者にはせっかくの料理も酒も台なしだ。何とかならないだろうか。
  日本人の60パーセントの男性が煙草を吸うそうだから居酒屋で煙草の煙が充満するのは当り前だろうが、居酒屋ではもっと多くのサラリーマンが煙草を吸っていると思うのは私だけだろうか。喫煙者が料理、酒、煙草を楽しむ権利があるように、非喫煙者にも煙に惑わされずに料理や酒を楽しむ権利があるはずだ。全席を完全に禁煙席にしろとは言わない。せめて店の半分ぐらい煙害のない環境で楽しみたいものである。骨董品に囲まれた居酒屋、他の店では飲めない特別な酒がおいてある居酒屋、そこでしか食べられない特別な食べ物を出す居酒屋というのは聞いたことがあるが、非喫煙者のことを考慮に入れた居酒屋というのは聞いたことがない。いつの日か「おい、お兄さん、ここではたばこは御法度だよ、どこか他の店で飲んでおくれ」と喫煙者に注意するような粋な旦那が経営する居酒屋で煙を気にせずに思いっきりおいしい酒が飲みたいものだ。
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怎Cジケビッチ