「坂本竜馬」

 1853年日本は依然として鎖国をしていて、外国人は長崎以外には来られなかった。ところが、6月にペリー提督が4隻の黒船で江戸湾に来航、徳川幕府に開国を迫った。それは日本にとって近代化へ歩み出す第一歩であった。黒船を一目見ようと江戸湾に大勢の日本人が行ったが、その中に坂本竜馬という17才の若者がいた。竜馬は明治維新に大きく貢献した人物の一人だが、様々な点で他の人物とは異なっている。ペリーが日本に来た当時竜馬は江戸で剣術の修行をしていたが、黒船を見てアメリカの国力が日本のよりはるかに優れていることを痛感した。自分の目で黒船を見たことが竜馬に大きい影響を与えた。

   坂本竜馬は1835年11月15日四国の高知の金持ちだが身分の低い侍の家に生まれた。子供の時はよくおねしょをしたり、他の子供にいじめられたりして親を心配させたが、14才で剣術を始めるとメキメキ頭角を現わし、17才の時剣術の修行をするために江戸へ向かった。黒船を自分の目で見たのは、江戸に着いて数カ月してからだった。江戸では1年ほど剣術の修行をして、剣術で食べていけるほど腕が上達した。2回江戸で剣術の修行をしたが、1854年高知で川田小竜という人物に会った。川田との出合いは竜馬を大きく変えた。川田は、ジョン・万次郎がアメリカから帰って故郷の高知に戻ってから彼の話を聞いてその話を一冊の本にした。竜馬は、アメリカが如何に進んでいるか、これからの日本は開国して貿易をして国の力をつけなくてはいけない、ということを川田から学んだ。

   この頃の志士達は、初めは徳川幕府を倒そうという考えは持っていず、天皇を中心に攘夷をしようという考えだった。しかし、日本と比較して欧米諸国の実力がどの程度進んでいるか理解していた志士は少なかった。竜馬も初めは攘夷の考えを持っていたが、黒船を見たり、川田や勝海舟と話をしたりして、日本は西欧諸国に侵略されないように航海術を学び海軍を作らなくてはいけない、西洋諸国と貿易をして日本の国力を強めなくてはいけない、ということを認識するようになった。

   竜馬が他の志士達と異なっていたのは、国に対する考え方であった。他の志士達は、薩摩藩、長州藩のように自分の所属する藩が国だと考えていたが、竜馬の考える国は日本全体であった。日本という国が西洋諸国と対等につきあっていくためには幕府と藩が一緒になって一つの共同体にならなくてはいけないと考えるようになり、まず当時犬猿の仲だった薩摩藩と長州藩を互いに協力させる薩長連合を実現させ、次に幕府と諸藩を一つにするために大政奉還を実現させた。

   他に竜馬が他の志士達と大きく違っていた点は、日本の将来に対する見方であった。他の志士達は、260数年続いた徳川幕府を如何にして倒すか、ということしか考えていなかった。これに対して、竜馬は徳川幕府の政治をやめさせることだけではなく、幕府を倒した後の日本をどうするかを真剣に考えて具体的に「船中八策」という形で示し、それが後に「五カ条の御誓文」という形で実現された。

   更に、当時の武士はお金を扱うのは卑しいことと考えていたが、竜馬は日本で最初の株式会社を長崎に設立して海運業を行った、という点で他の志士達とは大きく異なっている。長州が欲しがっていた軍艦を薩摩藩を通してイギリスから購入して長州藩に提供し、その代わりに米が不足していた薩摩藩に長州の米を提供して薩長連合を実現させた。海運業というビジネスを国のために生かすという新しい感覚の経営者だったと言うこともできるであろう。

   しかし、何と言っても竜馬の最も大きい特徴は、攘夷派、開国派、倒幕派など思想の違いに関係なく多数の人間と接したことである。それが可能だったのは、彼の人間性であろう。身なりを全く構わず茫洋としていたが、陽気できさくな人柄で人間的魅力に溢れていて、話を聞いている人を自分の味方にしてしまう不思議な力を持っていた。この彼の人間性がばらばらだった日本を一つの国家にしたと言っても過言ではない。

   日本の政治は、幕府を中心にした攘夷、幕府と天皇を協力させる公武合体、倒幕/天皇中心の政治、と変わって1868年に明治維新を迎えるが、広い視野を持って日本全体を一つの国と見なし、スムーズな政権交代を実現させ、倒幕後の日本の社会が如何にあるべきを具体的に示した坂本竜馬は、日本の近代史の中で大きな役割を果たした。

次の質問に答えなさい。
1 坂本竜馬が川田小竜から学んだのはどんなことですか。

2 竜馬のことで親が心配したのはどうしてですか。

3 竜馬と他の志士達の国に対する考え方はどんな点が違っていましたか。

4 日本の将来について竜馬と他の志士達の考え方の違いを簡単に説明しなさい。

5 薩長連合を実現するために竜馬はどんなことをしましたか。

6 他に竜馬が他の志士達と違っていたのはどんなことですか。

7 性格的に竜馬はどんな人でしたか。

8 薩摩藩と長州藩は仲が良かったですか。

参考文献:
「勝海舟と坂本竜馬」 加来耕三 学研M文庫 2001
「坂本竜馬」 山本大 実業之日本社 1999
「竜馬が行く」 司馬遼太郎 文芸春秋 1998
「坂本竜馬」 池田敬正 中公新書 1965
「竜馬:最後の真実」 菊池明 筑摩書房 1998
「竜馬の時代」 木村幸比古 高知新聞企業出版部 1997
「坂本竜馬」 豊田穣 学陽書房 1996
「坂本竜馬のすべてがわかる本」 風巻絃一 三笠書房 1993
「歴史の舞台を旅する 2 坂本竜馬」 近畿日本ツーリスト 1998
「坂本竜馬・永遠の青春」 相良竜介 東洋経済新報社 2000

怎Cジケビッチ
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