「速歩のすすめ」

 毎年夏に東京に滞在する。目的は様々で、日本語ビデオ教材の作成だったり、コンピューター教材の開発だったり、助成金をもらっての研究だったりする。長い時は2ヵ月以上、短い時は3ー4週間の滞在だ。東京滞在中は早朝走ったり、テニスをしたりして健康維持につとめるが、テニスが出来ない時や猛暑の時には都内で速歩をする。私の場合時速約6キロのスピードで78分歩くと1万歩になる。速歩には様々な効用があり、それらについて少し考えてみたい。
 先ずは、言うまでもなく健康に良いことだ。ダラダラ歩いたら時間をかけてもあまり効果はないが、背筋を伸ばして腕を大きく振って早足で歩くと血行が良くなり適度の汗が出る。過激なスポーツと違い息が切れることもなくゆったりした気持ちで体を動かせる。勿論ランニングやテニス、バスケットボールなども短時間で心拍数が上昇し汗が出るが、往々にしてやりすぎると膝や肘を痛めることがある。その点速歩は怪我の心配がない。特に心臓に持病がある方、血圧などに問題があって過度の運動を禁止されている方、肥満気味で膝、腰などに負担がかかる方、運動不足で便秘気味の方にはもってこいの運動だ。
 次に、老化防止、肥満防止の点から考えても速歩は大いに推奨できる。昔と比べて現代人は忙しい社会の中で車や電車、バス、タクシーなどを利用することが多くなり、自分の足を使って歩くということが少なくなった。特に交通手段が発達した大都会では電車、地下鉄に頼る度合が高く2駅、3駅の距離でも乗り物を利用してしまうことが往々にしてある。実際に歩いてみると分かるが、待ち時間などを考えると乗り物に乗って移動するのと同じぐらいの時間で歩いて移動できることがよくある。また、エレベーターやエスカレーターを利用して移動するのもいいが、ただでさえ忙しい日常生活の中でまとまったスポーツをする時間的余裕がない現代人には体を動かせるチャンスはできるだけ逃さずに速歩でなまった体を動かした方がいい。よく老化現象は足の衰えと共に始まると言われるが、早朝ジョギングや速歩で散歩をしている老人の肌のつやを見れば運動が如何に大切か分かるであろう。
 おまけに速歩は金がかからないし、場所に関わらずできる。ゴルフの場合ゴルフクラブやプレーする料金、テニスの場合ラケットやボール、コート代、水泳の場合水着やプールの料金に金がかかるが、速歩の場合にはジョギングシューズなど履きやすい靴さえあれば他には何もいらない。夏の暑い日にはTシャツと半ズボンでいいし、冬の寒い日には長ズボンを履いてセーターを2枚ぐらい重ね着すれば簡単にできる。また、テニスはテニスコートで、ゴルフはゴルフ場で、水泳はプールでしなくてはいけないが、速歩はどこででも容易にできる。天気が良ければ新鮮な空気を吸ってさわやかな気持ちで歩けばいいし、雨が降って外で歩けなければ高いビルの階段を黙々と登ったり、混んでいない時間を見計らってデパートの売り場を歩き回ったりすればいい。速歩はただでいつどこででもできるので本当に便利だ。
 また、車や電車を利用してばかりいると、風景があっという間に変わってしまうので、身近な街の良さを認識できないことが往々にしてある。高いビルとビルの合間にこじんまりとした神社が挟まっているのを見つけたり、坂道の下から通りを見上げて神社の鳥居のはるか向こうにきれいな夕日があるのを発見したり、猛暑の夕方下町の長屋の前で浴衣姿のおばあさんが打ち水をしているほほえましい風景に出会ったりするのは車や電車に乗っていたら絶対にできないことだ。また、速歩で街を歩いていると、こんなところにこんなものがあったのか、と今まで気付かなかったことに気付くことがよくある。小説やテレビのドラマで知っている場所や物を歩いている途中で目にして「あっ、そうか。ここにあるのか」と思ったり、信号が赤で止まっている時に近くにあるその街の説明を読んで「ここをこう曲がってこう行けばあそこに行けるのか」などと分かることがしばしばある。速歩することによって自分の住んでいる町の良さを再認識できる。
 体と懐に負担がかからなくて、健康に良い、仕事から離れて気分転換になり精神衛生上良い、など良いことが多い速歩を心がけようではないか。

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怎Cジケビッチ